マッサージ前に知っておきたい腰痛の基本
中腰の作業が続いたときや、くしゃみをした瞬間など、ある程度年齢を重ねた人なら、誰しも一度は腰痛の経験があるのではないでしょうか？今回はマッサージを受ける前に知っておきたい腰痛の基本をわかりやすく解説します。
腰痛の種類
腹痛や頭痛、そして膝痛に代表される関節痛など、私たちの体は時に「痛み」という形で体の中で起きている異常を知らせてくれます。
腰痛の仕組みも同様ですが、腰痛の場合は原因別に大きく２つに分けられます。
特異的腰痛
MRIやCTといった画像診断などを行うことで、腰痛の原因となる疾患が特定できるものは「特異的腰痛」に分類されます。
腰痛全体の約15%がこのタイプとされ、原因となる代表的な疾患には次のようなものがあります。
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄症（せきちゅうかんきょうさくしょう）
・腰椎圧迫骨折
・脊椎分離症
・脊椎すべり症
検査によりこうした疾患が発見された場合、軽症の段階ならまずは理学療法や薬物療法による保存的治療が行われます。
しかし症状が重篤である、長期間保存治療を続けても症状が改善されないといった場合には、手術による外科的アプローチが必要になります。
特異的腰痛の原因となる疾患の多くが、背骨の神経（脊髄神経根）が圧迫されて痛みが起きているため、痛み以外に脚の痺れや筋力低下を伴うことが多いのが特徴です。
こうした疾患が腰痛の原因となっている場合、放置すると重症化して歩行困難や排尿障害に至る場合もあるためなるべく早めに画像診断ができる設備が整った整形外科を受診してしっかりと検査を受ける必要があります。
非特異的腰痛
一方、画像診断などでは腰痛の原因がはっきりと特定できないタイプの腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれており、腰痛全体のおよそ85％を占めます
非特異的腰痛の主な原因は、筋肉や腱などのなんらかの損傷だとされています。腰の筋肉や筋膜に対してスポーツなどで急激に負担をかけた、逆に座ったままの姿勢を続けることで腰の筋肉に慢性的に負担をかけることなどが原因で生じる「筋・筋膜性腰痛」が代表的で、「ギックリ腰（腰椎捻挫）」も筋・筋膜性腰痛症の一種とされる場合があります。
さらに非特異的腰痛は、「急性」と「慢性」に分けられます。
ギックリ腰のように急激に痛みが襲い、１〜2週間程度で解消されるものは急性、そして３ヶ月以上経過しても痛みの症状に改善が見られない場合には慢性に分類されます。
慢性腰痛の場合、同じ姿勢を長く続けることが腰痛の原因となっている場合が多く、デスクワークで長時間座りっぱなしや立ちっぱなしを続ける、長時間休憩を取らずに車の運転を続ける、猫背など日頃から姿勢が悪いといったことが原因となります。
隠れ腰痛には注意が必要！
実は腰痛には、整形外科的疾患以外の疾患が腰椎や脊椎にある場合や、腰回りとは関係ない体の部位に痛みの原因となる疾患がある場合、さらには精神の不調が原因となっている場合もあります。
そうした「隠れ腰痛」の原因となる疾患には、次のようなものがあります。
・悪性腫瘍
・脊椎感染症（化膿性脊椎炎、脊椎カリエスなど）
・変形性股関節症や膝関節症といった腰回り以外の整形外科的疾患
・尿路結石
・子宮内膜症
・胆石・十二指腸潰瘍など
・解離性大動脈瘤
・うつ病・統合失調症
中には命に関わる重篤な疾患が腰痛の原因になっている場合もあるため、「高齢だから腰が痛いのは仕方がない」と決めつけず、まずは整形外科を受診してしっかり検査をし、それでも原因が見つからずにその後も腰痛が続くようであれば、整形外科以外の診療科も受診しししっかりと腰痛の原因を探る必要があります。
腰痛のときのストレッチやマッサージ
特異的腰痛の場合には、まずは原因となっている疾患に対する治療が必要です。
一方、非特異的腰痛の中で、デスクワークで座りっぱなしなど主に日常の動作が原因で腰痛を発症している場合には、強い痛みが出ている急性期には安静が第一ですが、痛みが一段落したら、少しずつ無理をしない範囲で筋肉を動かすことで症状が改善される場合があります。
腰痛に効果があるケアには、次のようなものがあります。
ストレッチ
長時間同じ姿勢を続けると血行不良になり、筋肉が固まってしまいそれが腰痛の原因となります。
そこでストレッチを行うことで血流を促し、筋肉のコリをほぐしてやることで腰痛の緩和効果が期待できます。
腰痛改善のためにストレッチを行う場合、以下の筋肉にアプローチできるストレッチを行うと効果的です。
特にインナーマッスルは、表面から直接触れて筋肉のコリをほぐすことが難しいため、ストレッチやヨガ、ピラティスなどで筋肉の緊張をほぐすことが効果的です。
腸腰筋（ちょうようきん）
背骨から腰骨の前側、骨盤の内側、太ももの付け根の内側に付着している大腰筋・小腰筋・腸骨筋の3つの筋肉の総称です。
いわゆる「インナーマッスル」と呼ばれるもので、上半身と下半身を繋ぐ、太ももを持ち上げる、姿勢を維持するために働く重要な筋肉です。
腰方形筋（ようほうけいきん）
背中の最深部にある筋肉で、わき腹の奥にあり、骨盤の一部から肋骨の下部を繋ぐ左右対象の筋肉です。
腰方形筋は姿勢を保つために大切な役割を果たす筋肉で、筋肉の硬直具合に左右差などが生じると骨盤の傾きを起こし、それが腰痛の原因になる場合があります。
大腿四頭筋（だいたいしとうきん）
大腿（太もも）の前面にある大腿直筋（だいたいちょっきん）、内側広筋（ないそくこうきん）、外側広筋（がいそくこうきん）、中間広筋（ちゅうかんこうきん）の総称です。
大腿四頭筋が硬直するといわゆる「反り腰」といわれる状態になり、背面の筋肉に極端に負担がかかってしまうことで腰痛の一因となります。
マッサージ
マッサージで血行を促し、筋肉の緊張をほぐすことも症状の改善に効果的です。
セルフケアを行う場合には、「ツボ」を意識するとより症状改善の効果が期待できます。
腰痛に効果があるツボには次のようなものがあります。
・腎兪（じんゆ）：ウエストを挟むように手を当てた時に、親指が当たる場所にあるツボ
・大腸兪（だいちょうゆ）：腰骨の一番高い部分を背骨まで結んだ高さで、背骨から左右それぞれ指2本分外側にある
・大衝（たいしょう）：足の甲にあり、親指と人差し指の骨が交わる部分にある
こうしたツボを指圧する、ゆっくりともみほぐすことで筋肉の緊張を緩め、腰痛改善につながる場合があります。
ツボ押しはセルフケアも可能ですが、背中のツボなどは自身の手では届かない場合があります。さらにツボの鍼灸を施すことも効果的とされているので、専門家の手に委ねるとより効果的です。
腰痛ケアを受けられる施設
マッサージをはじめ腰痛ケアを受けられる施設には、次のようなものがあります。
接骨院
整骨院は、国家資格である「柔道整復師」の資格を持った施術者が治療を行う施設で、骨折や脱臼、捻挫の整復のほか、ストレッチや運動療法の指導などもしてくれるため、腰痛改善に効果があります。
鍼灸院（しんきゅういん）
「鍼師」「灸師」の国家資格を保持する者が施術を行う施設で、鍼治療は専用の鍼をツボに刺入して治療を行い、灸治療はツボにモグサを使い、熱の刺激を与える治療を行います。
整体院
東洋医学をベースに、筋肉や骨格矯正を行うことで体のバランスを整えて不調を改善します。
筋肉に直接アプローチする施術を行うので、慢性腰痛などには効果があります。
カイロプラクティック
西洋医学ベースにアメリカで生まれた施術で、背骨を中心とする全身の骨格のゆがみを手技で調整することで全身のバランスを整える施術です。
腰痛の場合には原因となっている骨格の歪みを特定し、手技により矯正します。
リラクゼーションサロン
リラクゼーションサロンとは、心身をリラックスさせることを目的に施術を行う施設です。
そのため手技を施すだけではなく、ヒーリングミュージックが流れていたり、アロマの香りが漂っていたりと癒しの空間作るに工夫が凝らされている店舗も少なくありません。
ストレスや疲れが溜まったと感じる時に気軽に訪問して施術を受けることで体を常に良いコンディションに保てる効果があります。
リラクゼーションサロンでは多様な施術を提供していますが、代表的なものには服を着たまま体のコリをほぐす「ドライマッサージ（もみほぐし）」、マッサージオイルやアロマオイルを用いてコリをほぐす「オイルマッサージ」、ストレッチ的要素も取り入れられている「タイ式マッサージ」、足裏を中心にもみほぐす「リフレクソロジー」などがあります。
まとめ
多くの人が悩む腰痛ですが、その分「年齢だから」「肉体労働だから」「家事仕事が多いから」などと理由をつけて軽く考えてしまいがちです。
しかし今回ご紹介したように、腰痛の裏には重篤な疾患が隠れている場合もあります。
痛みが強い場合には一度しっかりと検査をして痛みの原因を突き止める、疲れを感じたらリラクゼーションサロンなどで症状が軽いうちに疲れをとることで、不快な腰痛から解放されましょう。
